空き家の3,000万円特別控除には「亡くなった方がその家に一人で住んでいたこと」という要件があります。そこで多くの方がこう考えます——

「うちは最後の2年、特養に入っていたから対象外だ」

諦めるのは早計です。 老人ホーム等に入所していた場合の例外規定があり、要件を満たせば控除は使えます。ただし、この論点はネット上の解説の誤りが特に多い場所でもあります。「施設に入っていたら全部ダメ」も「施設入所でも全部OK」も、どちらも間違いです。

分かれ目は、たった一点。

施設に入る時点で、要介護認定・要支援認定(または障害支援区分の認定)を受けていたか。

使える/使えないの分かれ目

✓ 使える可能性が高いケース

  • 要介護認定を受けて特別養護老人ホームに入所し、実家は家財を置いたまま空き家にしていた
  • 要支援認定を受けてサービス付き高齢者向け住宅に入居していた(サ高住も対象施設です)
  • 認定を受けて有料老人ホーム・老健・介護医療院・グループホーム等に入所していた

✕ 使えないケース

  • 認定を受けずに、自主的に有料老人ホームへ入居した(元気なうちの「住み替え」型入居が典型)
  • 入所後、実家を誰かに貸した・親族を住まわせた(家賃なしでも不可)
  • 施設ではなく子の家に身を寄せていた(「主として居住していた家」が実家でなくなるため)
  • そもそも入所前から家族が実家に同居していた(一人暮らし要件を満たさない)

この例外は2019年(平成31年)4月1日以後の売却から適用されています。

正確な要件——3つそろって初めて使える

国税庁の規定(No.3307)を平易に言い換えると、次の3点すべてが必要です。

① 入所時点の認定 要介護認定・要支援認定(または障害支援区分の認定)を受けた上で、対象施設(特養・養護老人ホーム・軽費老人ホーム・有料老人ホーム・サ高住・老健・介護医療院・認知症グループホーム、障害者支援施設等)に入所していたこと。

② 入所後も、実家が「本人の家」であり続けたこと

  • 家財の保管など、本人の生活の本拠に準じた使われ方をしていた
  • 事業・貸付け・他人の居住に使っていない
  • 本人にとっての「主たる家」が実家のままだった(施設と実家以外に生活の拠点を移していない)

③ 通常の要件も全部満たすこと 1981年5月31日以前の建築/戸建て(区分所有登記なし)/相続開始直前まで①②の状態——など、通常の12項目(完全チェックガイド)は老人ホームケースでもそのまま必要です。

⚠️ 認定のタイミングに注意。「入所した後に認定を受けた」「認定を申請中に入所した」といった境界のケースは、判定が微妙になります。該当しそうな場合は自己判断せず、時系列を整理して税理士・税務署に確認してください。

「分からない」ときの調べ方

親の介護の記録は、意外と手元に残っていないものです。次の順で確認できます。

調べたいこと 見る書類・行く場所
認定を受けていたか 介護保険被保険者証(認定区分・認定日が記載)。見つからなければ市区町村の介護保険担当課で相続人として照会
いつ入所したか 施設の入所契約書・利用料の請求書
実家の使われ方 電気・ガスの契約状況(閉栓日の記録は控除の確認書申請でも使います)

この3点は捨てずに保管してください。 控除を使う際、市区町村で「被相続人居住用家屋等確認書」を取るときの添付書類になります(老人ホームケースでは介護保険被保険者証の写しや入所契約書の写しを求める自治体が多い。交付まで1週間程度)。

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入所中・入所後にやってはいけないこと

まだ親が施設で健在の方(生前の方)にこそ、知っておいてほしい2点です。

  1. 実家を貸さない・誰も住まわせない。 入所後に一度でも貸付け・他人居住があると、この例外は使えなくなります。「空けておくのはもったいない」の一手が、将来の数百万円と引き換えになります(貸す判断の損得は売るか貸すかの記事で比較しています)
  2. 書類を確保しておく。 介護保険被保険者証・入所契約書・(あれば)実家購入時の売買契約書。相続後に探すより、今まとめる方が確実です(処分しがちな書類はやってはいけない実家の相続の⑦に)

よくある質問

Q. サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)でも対象になりますか? なります。サ高住は対象施設に含まれます。ただし入居時点で要介護・要支援認定を受けていたことが前提です。

Q. 認定を受けずに有料老人ホームに入っていた場合は絶対に使えませんか? 原則として適用は難しい規定になっています。ただし時系列(認定日・入所日)の整理で結論が変わる余地はあるため、諦める前に一度、書類を揃えて税理士に確認する価値はあります。

Q. 入所後、実家を親戚に貸していました。控除は使えますか? 使えない可能性が高いです。入所後の貸付け・他人居住は例外要件を満たさなくなります(家賃なしでも同様)。

Q. 施設ではなく、亡くなる前は私(子)の家で暮らしていました。 この例外は「老人ホーム等への入所」を対象とした規定のため、子の家への転居は対象外です。実家が「主として居住する家」でなくなったと扱われます。

出典