「実家じまいにいくらかかるのか」——この質問に一つの平均額で答える記事は、あまり信用しないでください。
実家じまいの費用は「家の状態」より、「どの出口を選ぶか」で桁が変わります。売却代金から精算できて持ち出しがほぼゼロで済む人もいれば、解体と国庫帰属で400万円近くかかる人もいます。
この記事では、費用の全項目を段階別に並べた総目録と、費用を減らせる順番、そして手元にお金がないときの現実的な進め方をまとめます。
金額は公的制度は一次情報、工事・サービスは民間の相場データにもとづくレンジです(最終確認日:2026年8月3日)。実際の金額は物件・地域・業者により変わります。
実家じまいの全体像——やることは3段階しかない
- 中身を空にする(片付け・家財の処分)
- 権利を整える(相続登記)
- 出口を選ぶ(売る/解体して売る/貸す/手放す)
費用が大きく動くのは3段階目です。逆に言えば、出口を決める前に大きなお金を使うのは順番として危険です(先に解体してしまい、後から「解体せずに売れた」と分かるケースが典型)。
費用総目録
段階1|中身を空にする
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 残置物(家財)の撤去 | 5万〜7万円程度〜 | 解体の付帯工事として頼んだ場合の実例レンジ。量が多いと数十万円規模に |
| 自分で片付ける場合 | 処分手数料+運搬のみ | 自治体の粗大ごみ・持ち込み処分を使えば大きく圧縮可能 |
| 仏壇・位牌 | 寺院・宗派による | 閉眼供養(魂抜き)は菩提寺にまず相談。相場を謳う業者価格を鵜呑みにしない |
節約の要点:買取業者の中には残置物込みで買い取るところがあります。出口が「買取」なら、片付け費用自体が消えることがあります。
段階2|権利を整える(相続登記)
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 固定資産税評価額 × 0.4% | 評価額1,000万円なら4万円 |
| 司法書士報酬 | 5万〜15万円程度とされる | 自分で申請すれば不要(手間はかかる) |
| 免税措置 | 評価額100万円以下の土地は免税 | 2027年3月31日まで。田舎の土地は該当することが多い |
⚠️ 相続登記は2024年4月から義務です(取得を知った日から3年以内、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料)。2024年3月以前の相続にも適用され、その経過措置期限は2027年3月31日。これは「かかる費用」ではなく「払わないと増える費用」です。
段階3|出口ごとの費用
| 出口 | 主な費用 | レンジ |
|---|---|---|
| そのまま売る | 仲介手数料(800万円以下の空き家は上限33万円)+測量費など | 数十万円(売却代金から精算可) |
| 解体して売る/更地にする | 解体費:木造30坪で坪3.1万〜4.4万円、付帯工事込み実例約122万〜260万円 | 補助金(率1/3〜1/2・上限50万〜150万円が中心)で圧縮可 |
| 持ち続ける | 固定資産税+管理月5,000〜15,000円+火災保険年1万〜6万円 | 年間で十数万円が毎年。10年で百万円規模 |
| 国庫帰属(国に引き取ってもらう) | 審査手数料1.4万円/筆+負担金(市街化区域の宅地150㎡で約67万円)+建物解体・境界確定が前提 | 総額200万〜400万円規模になり得る(当サイト試算) |
※「タダで国に引き取ってもらえる」は誤解です。建物があると申請自体が却下されます。
出口別・持ち出しシミュレーション
- A. 壊さずに売る(3,000万円控除+買主側解体の特約を使う):登記+仲介手数料のみ。売却代金から精算でき、持ち出しはほぼゼロ。2024年からは「買主が翌年2月15日までに取り壊す」形で控除が使えるため、売主が解体費を払わずに済む道があります
- B. 解体してから売る:A+解体費(補助金があれば実質30万〜200万円程度)。更地の方が売りやすい地域では選択肢
- C. 国庫帰属:200万〜400万円の持ち出し。売れない・貸せない・隣地も買わないが全部確認できた後の最終手段
▶ どの出口が一番得かは、家の条件で決まります 築年数・立地・相続からの年数を入れると、売る・解体する・持ち続けるを10年分の金額で比較できます。 実家の損得診断をはじめる(無料・約2分)
費用を減らす順番(効果の大きい順)
- 3,000万円特別控除の期限内に売る — 税額が最大数百万円変わります。費用削減ではなく「失わない」が最大の節約(→3,000万円控除の完全チェックガイド)
- 解体は「本当に必要か」を先に確認 — 買主側解体(ルートC)や古家付き売却なら解体費そのものが消えます
- 解体するなら補助金+着工前申請 — ほぼ全ての自治体で契約・着工後の申請は不可。順番を間違えると50万〜150万円を取り損ねます(詳細は解体費用と補助金の記事)
- 解体・遺品整理は必ず3社相見積もり — 同条件でも見積額は大きく開きます(解体は地域・立地で1.2〜2.1倍の差)
手元にお金がないときの進め方
「実家じまいをしたいがお金がない」は、実は最も検索されている悩みの一つです。現実的な道筋は5つ。
- 売却代金からの精算で完結させる:仲介手数料・登記費用は決済時に売却代金から払える段取りが組めます。持ち出し前提で諦めない
- 買取業者に残置物込みで売る:片付け費・解体費・仲介手数料が不要になる形。価格は仲介の7〜8割程度とされるので、費用ゼロと価格差を比較して選ぶ
- ルートC(買主側の解体):解体費を負担せず控除も使える。2024年からの新しい選択肢
- 解体補助金:着工前申請を守れば実費が半分前後になる自治体が多い
- 自治体の空き家相談窓口:無料。補助金・登録業者・空き家バンクの情報が一度に取れます
やってはいけないのは、お金がないまま「放置」を選ぶことです。固定資産税・管理費・保険で年十数万円が出続け、建物の劣化で解体費は上がり、売却価格は下がります。放置は「無料」ではなく、一番高い分割払いです(税額が実際にどう変わるかは固定資産税「6倍」の検証記事で計算しています)。
かけなくていいお金
- 「実家じまい一式◯◯万円」型の高額パック:片付け・供養・解体・売却は分ければそれぞれ相見積もりが取れます。束ねた瞬間に比較ができなくなる
- 出口を決める前の解体:更地にしてから「解体しない方が高く売れた」は取り返しがつきません
- 相場を確認しない遺品整理の即決契約:訪問見積もり当日の即決を迫る業者は避ける
よくある質問
Q. 実家じまいの費用は平均いくらですか? 出口によって数十万円〜400万円規模まで変わるため、平均額にはあまり意味がありません。「そのまま売る」なら売却代金から精算できて持ち出しほぼゼロ、「解体して売る」なら解体費100万〜260万円(補助金で圧縮可)、「国庫帰属」なら200万〜400万円規模が目安です。
Q. お金がなくても実家じまいはできますか? 出口が「売却」なら可能性は高いです。仲介手数料や登記費用は売却代金から精算でき、買主側が解体する形(2024年〜)なら解体費も不要です。まず「いくらで売れそうか」を確認するのが最初の一歩です。
Q. 解体費用の補助金はありますか? 多くの自治体にあります(補助率1/3〜1/2、上限50万〜150万円が中心)。ただし着工前の申請が必須で、契約・着工後は申請できません。金額・条件は自治体ごとに異なるため、実家の所在市区町村の空き家担当課で確認してください。
Q. 実家じまいは何から始めればいいですか? 「出口の当たりをつける」ことからです。売る・解体する・持ち続けるのどれが得かで、片付けや解体にかけるべきお金が変わります。重要書類(権利証・納税通知書・購入時の契約書)の確保だけは最優先で。